毎日、夕方になると雨が降る。
 もうすぐ夏が来る、空のパレードだ。
 通りを歩く人たちの傘が雨で光って、夏は大威張りでその上を走ってくる。
 でも雨音はそんな夏なんかお構いなしに、自分の仕事をする。
 私みたいな人を、ひとりぼっちにすることだ。
 ひとりぼっちになれるうちは大丈夫、と、私みたいな人が自分に言い聞かせることができるように、雨音はずっと、懐かしい音を響かせる。
 雨の音は、ずっと昔に、いつも聞いていた音に似ている。
 あの時も、私はひとりぼっちだった。
 だから、ひとりぼっちは怖くない。

 これから私がどうなるのかはわからない。
 雨が降るたびに溶けていって、最後には消えてしまうかもしれない。
 あの人にも、会えるかどうかわからない。
 会えないかも知れない。
 でも、雨音が私をひとりぼっちにしてくれるうちは、どんどんひとりになろう。
 これから誰に会うかはわからない。
 わからないから、誰かに会う日まで、雨音を聞いて、ひとりぼっちで、いよう。

fin.




NOVEL TOP  BBS  MAIL



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送