私はもしかすると、人間じゃないのかもしれない。
 いつも雨が降るとこう思う。
 雨の日、人はなんだかきれいに見えることがある。
 でも私はそれを見ながら、空が湿っていくのと反対に、自分がどんどん渇いていくのがわかる。
 私にあの気持ちはわからない。
 雨が降るたびにこう思う。
 遠くにいるあの人に、届けて欲しいことはあるけれど、それは無理だよって、誰かの声が否定する。
 何度も何度も否定する、この声は誰の声だろう。
 せめてこの声だけでもあの人の声なら。

 雨が降るたびにあの人のことを考える自分を、何度も何度も否定する。
 否定するほどに雨は降る。
 空はとてもやさしい。




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