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電話が掛かってきたので出ると、『助けて』って掠れ声がきこえてすぐ切れた。
何のホラーやねん。
むしろウケ狙いか?
ホンマ手ぇ掛かるやっちゃなぁ・・・
仕方なく開いていたテキストを閉じてカバンに入れて立ち上がる。
明日のテスト、万が一ダメやったらお仕置きやな、アイツ。

わざと焦らすために、学校から歩いて30分の道のりをことさらゆっくり歩く。
でも内心では助けてってなんやねん、ていう不安もないわけやなくて、最終的には結構早足になってて 結局30分の道のりを23分で終えた。
まだまだ甘いな、俺も。
そう思いつつポケットからカギを出して勝手に部屋に入る。
部屋は電気もついてなければ、何の物音もしなかった。
「なんや、死んだか?」
と冗談半分に笑ってみようとしたけど顔が引きつったので途中で止めた。
玄関で靴を脱いで部屋の中に入ると、ベッドの上の布団が膨らんでいた。
「なんや、寝とるんか」
と、声を掛けるとそのふくらみがかすかに動いた。
死んではないみたいやな、と思って布団をめくると、異様に丸っこくなって眠る姿。
眉間に皺が寄っている。
「おい、田中?」
その眉間をつついてみたら、妙に熱い。
そのまま手を額に当ててみたら、明らかに高熱だった。
「あー、みずかみくんだー。なにしにきたのー」
するとぎゅっと閉じられていた目がうっすら開いてぼんやりとこっちを見て、掠れた声が言う。
「お前、あんなホラーな電話かけといて何言うてん」
「ホラーなでんわ?」
「助けて、言うて切れてんで?」
枕元に転がっていた電話の子機を拾って見せると、田中の顔にハテナマークが浮かんだ。
「……私が?」
覚えてへんのかい! って突っ込みのひとつも入れてやろうかと思ったけど、どうも高熱で意識が 朦朧としてるみたいやから許してやる。
「メシは?」
「え? ていうか今なんじ?」
「昼の12時。お前声かっさかさやな。もう喋らんとき。メシ作ったるから」
「水上君がやさしいー。こわいー」
「お前失礼やぞ」
おでこにあててた手でぺちっと叩いたのに、田中はふにゃっと笑った。
「何笑てんねん」
「へへへへー」
「アホか。寝とけ」
いつまでもふにゃふにゃふにゃふにゃ笑ってるからアホらしくなって布団を掛けなおしてやった。
すぐに寝息が聞こえてくる。
クローゼットから薬箱を出して冷えピタを探し出して貼ってやって、キッチンへ向かう。
ホンマ、手ぇ掛かるやっちゃなあ。×××

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