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ほんのいたずら心で、やってみたんだけどどうかなぁー。

「ふふふふふふー」
大学の学食にて。
友人たちとごはん中。
今日は早起きしてしまったのでお弁当を作ってみた。
自分の分と、水上君の分。
水上君は私が起きても全然起きる様子がなくて、出発するにはギリギリの時間までベッドで寝てた。
「どーしたのナノカ。急に不敵に笑ったりして」
「へへへへへへへー」
そして家を出ようとしたところに「ハイお弁当」って渡したから、水上君はその中身を知らない。
「キモチワルイよ。笑いすぎ」
お弁当を食べながら笑いつづける私を、友人は怪訝な顔で見る。
「ちょっとイタズラしちゃった」
「誰に」
「みずかみまーくん」
友人たちは水上君のことをまーくんと呼ぶ。
つい友達の彼氏ってあだ名つけちゃうよね。
「おおまーくんに! 何やったの、何やったの」
「お弁当にね」
言いながら携帯を取り出して画像フォルダを開く。
「こんなことしちゃいましたー」
「おおーー!」
私の見せた画像にどよめく一同。
画面には、ハート型に並んだ梅干が乗っかった白ごはんの画像。
「スゴイ、これはスゴイ」
「なんか実家から小梅の漬けたのが送られてきてねー」
「パンチ効いてるねー」
画像を見ながらみんなでけたけた笑っていたら、画面が『着信中』に切り替わった。
おー、来た来た。
「ちょっと出てくるね」
「おう、まーくんにヨロシクー」
「はーい」
みんながいるテーブルから離れて、通話ボタンを押す。
「はいはーい」
『ナノカ! オマエ! おまえなぁ!』
よっぽど頭が混乱してるのか、いきなり私の名前を呼ぶ水上君。
「はーい?」
『どないな神経しとるんじゃ!』
「なんのことー?」
『弁当に変な細工すなっ』
怒鳴りっぱなしだし。
きっと電話の向こう、水上君は耳を赤くしているのだろう。
かわいいなあ。
「いいじゃん。梅干には殺菌作用が」
『そういう問題ちゃう!』
「ちょっとハートに並べただけじゃん」
『普通に教室で開けてもーた、騙された』
「いつまでも寝てるのがワルイんですー」
『あーもー』
「残さず食べてネ?」
ちょっとぶりっ子声で言ってみたら、電話口からはぁ、って溜め息が聞こえた。
『きれいさっぱり食うたるから安心しとき?』
うわー。何その狙ったような低めの掠れ声。
かっこいい。かっこいいけど。
「ぷっ」
『おまっ、笑うな!』
「じゃーきれいさっぱりお願いしますよー。じゃあねー」
電話口でぎゃーぎゃー騒ぐ水上君を放っといて終話ボタンを押す。
成功成功。いつも負けてばっかりではいられないものね。
にやにや笑いながらテーブルに戻ったら、友達もみんなにやにや笑ってた。
ふふふ。
まーくんざまあみろ。×××

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