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水上君はけっこう読書家だ。
カバンの中にもいつも何かしらの本を忍ばせてるし、ちょっとしたヒマがあったらすぐ本を開く。
私の部屋にも水上君の本はたくさん転がっていて、妙にたくさんなので先日ついに3段BOXの一段を 水上君の本専用にしてしまった。
まぁ、私も勝手に読んでるしいいかと思って。

でも私はたまに本にやきもちをやく。
だって、ちょっと熱中してくるとすぐ私のこと眼中になくなっちゃうんだもん。
「水上くーん、ゴハンできたよー」
今日も水上君は、先日発売された話題の新作に夢中。
話し掛けても生返事しか返ってこなかったのが、ついに返事すらされなくなった。
「水上くーん。み・ず・か・み・くーん」
ダメだ。
全然聞こえてない。
仕方ないのでこれを良い機会に、と水上将人君を観察してみることにした。

肌は意外と白め。
髪は黒。
実は泣きボクロがある。泣いてるところ見たことないけど。
ややたれ目気味。
わりと男らしい眉。
睫毛はかなり長い。
水上君の長いマツゲ、好き。
「あ〜やかましいやっちゃなあ」
気付かれないのをいいことにかなりじろじろ見ていたら不意にその長いマツゲがふっと上向いて、 顔の割に子どもっぽい目がこっちを見た。
「え? やかましい?」
「そんなに見んなや。減る」
「減らないよ」
「減るわ、アホ」
読んでた本をぱたん、と閉じて脇に置いて、目の前に置かれた箸を手にとっていただきますした 水上君は、その箸をまたテーブルの上に置いてなにやら不満そうな顔。
「減らないでしょ?」
もう一度訊くと、水上君ははぁ、ってため息をついた。
「減らんけどやな」
「けど?」
「あー、やかましいわ!」
「ええっ、なんで」
「オマエの目線がやかましい・・・てか、腹減った」
再び箸を取りご飯を食べはじめる水上君。
急ぎすぎて肉じゃがのジャガイモで「熱っ」ってなっている。
「どんな殺し文句やねんそれ」
私と目を合わせず、黙々とご飯に集中してるふりをしている水上君に関西弁で突っ込んでみたら、 「ウルサいわ」って拗ねられた。
下を向いた水上君のマツゲはやっぱり長くてスキ。
「ええから早よ食え!」
ぐわっと釣りあがった眉もまた良し。
もちろん、照れたときに鼻を掻く手も、赤くなった形のいい耳もかわいくて好き。
って、またじろじろ見ていたら、アタマに一発、ツッコミを入れられた。×××

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