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お世話になっているライブハウスのナカゴミさんに誘われて断りきれず、インディーズ盤に2曲 収録することになってしまった。
とはいえそんな大掛かりなものではなくて、音録りはいつものライブハウスで。録ってくれるのは 音屋さんを目指す彼氏。
要するに水上君。
お客さんはいなくて、水上君と私とナカゴミさんの3人だけ。
歌は、いつもオープニングで歌ってるやつと、この前できた曲。
あのケンカ中の。
1曲は何とか録り終わったんだけど。
「うーん」
大体、私利私欲のために作った曲をCDに入れるはめになるなんて思ってなくて、しかもその唄の相手が 録音、とかちょっとした罰ゲームだし。
「なん?」
1曲録り終わってそれをチェックしてる水上君を見ながら唸ったら、それに気付いた水上君が ヘッドホンをちょっと上げてこっちを見た。
ナカゴミさんはさっき電話をかけるために外に行ってしまって、なんと今は2人きり。
もう罰ゲームというよりゴーモンだ。
「うーーー」
「何今更緊張しとんねん」
「だってお客さんいないし…」
「お前、普通逆ちゃうん?」
「うーー、逆だけどぉー」
水上君ひとり相手に真剣にうたうなんてムリだってば。 
照れっるってば。
お客さんいたほうがよっぽどマシだってば。
「なんやねん、オマエ」
笑いながらそう言って立ち上がってこっちに来るから思わず首をすくめると、頭上から声。
「ま、気楽にいこや」
そう言って私の頭をポンポン、と撫でて、「ちょぉ、タバコ吸ってくるわ」って言って笑って 出て行った。
「あーーー」
しかもなんか、今日の水上君、カッコイイモードなんだよなあ。
お仕事モードっていうか。
なんだアレ。ずるいよなんか。
気楽になんかいけないよー。
今更心臓がばくばくしてきたので、ギターのチューニングをしてみることにした。
落ち着け、私。×××

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