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「『好きやから言えんこともあるやろ』…って、似合わなーい!」
「お前ウルサいわ」
「あー、照れてるし」
田中は部屋でテレビを見ている俺の背後、俺のベッドの上で例のショートムービーの台本を読んでいる。
「ていうかさだからそもそも」
「なんや」
「なんで水上君が出ることになってるの?」
「・・・・・・」
「えー! この話題であんな大ゲンカしたのにまだ教えてくれないわけなの!?」
「お前ウルサいわ!」
「そればっかりだし」
ぷいっと横を向いてしまった田中は、そのままベッドに倒れこんだ。
最近ちょっと甘やかしてたからか、行動や言動がかなり幼くなっているような気がする。 
俺がじっと見てると壁側に寝返りをうって、完全に拗ねた。
それでもずっと見てみたけど無反応。
ちょっと溜め息をついてみたけどこれも反応なし。
仕方なくテレビを消して立ち上がり、ベッドの上に乗り上げた時点でやっと肩がびくっと反応した。
「そんなに知りやいんや?」
後ろを向いたままの首が肯定するように大きく揺れる。
「お前のことは好きやからなんでも教えてやりたいけど」
びくっとまた反応してこっちを振り返ろうとする肩を押さえて耳元で囁く。
「好きやから言えんこともあるやろ」
上から覗き込んで、絶句する田中に笑いかけてみたら、マンガみたいに真っ赤になった。
それを見て、つい爆笑。
するとようやく事態を飲み込めたらしい田中はがばっと起き上がって俺のことをぽかぽか叩いた。
「もー、今のやつさっきのセリフじゃんバカー!」
「お前がいつまでも拗ねてるからやん」
「もー、もーやだ! 出ちゃヤダ! あんなかっこいいセリフ言っちゃやだー」
いつの間にか叩いてた手で俺の胸倉を掴んでかわいいことを言ってくるのでついまた笑う。
「笑いごとじゃありません」
「もう断ってん」
「え」
「ていうかオマエ、早とちりにもほどがあるで? 俺、出るなんて最初から一言も言うてへんやん」
「え、え、じゃあもしやあのケンカもまったくの無意味…?」
「さぁ、それはどうやろな」
おそるおそる上げられた田中の顔をにやっと笑って覗き込んだら、手で思いっきり押しのけられた。×××

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