14


3年目にして訪れた最大のピンチも乗り越え、日常が戻ってきた。
ガッコも始まったしな。
なんてノンキなことを言うてたら、田中が体調崩して寝込んだ。

学校帰りに食材を買って田中の家に帰る。
あまり音を立てないように、と静かにドアを開閉してカギを掛けて、冷蔵庫に買ってきた食材を 入れる。
「あ、タマゴ買い忘れた」
後ひとつやから買おう、思てたのに。
ぼそっと呟いたら部屋のほうから声がした。
「あれー、みずかみくん帰ってるー?」
普段より弱々しい。
「おう、起きたか」
「一日中寝てたからもう眠れないよ」
部屋に入ってベッドに近づくとそう言いながら起き上がろうとするから、
「嘘言うな、そんな眠そうな顔して」
とその肩を押し戻す。
どうひいき目に見ても回復するまでにまだまだ時間が掛かりそうだった。
その顔を見ながら軽くため息をついたら、田中は申し訳なさそうな顔でこっちを窺っている。
「メシ、作ったるから。寝とき」
笑って頭を撫でてやったら相手もちょっとだけ笑って目を閉じた。
なんでコイツはこんなになるまで我慢するんやろか。
もともと体力ないほうやから、見ててヒヤヒヤすることは多い。
いつも夏終わりに体調崩すもんな。
しかし今回は特に酷かった。
ヨリ戻してからふと、明らかに前より痩せていることに気付いて注意して見とったんやけど。
コイツ、最後まで「大丈夫、大丈夫」て笑てて。
で結局全然大丈夫やなくて、一緒に買い物に行った帰りに倒れたときには驚いた。
倒れるほどやばかったくせに、何大丈夫とか笑てんねん。
アホかお前は。
少しは俺も頼れや。
と、かなり落ち込んだ。
結局うまく騙されて、気付いてやれんかった自分にも腹立つし。

出汁を取っておいた鍋に切ったにんじんとジャガイモと玉ねぎをいれて火に掛けて部屋に戻ると、田中はすうすう 寝息を立てていた。
もう眠れない、とかまたウソやん。
『だって心配かけるのもアレかと思って』
とかそんなん言うなや。
倒れるまで頑張らんでええやん。
いつも頑張ってるとこがお前のええとこやけど。
「頑張りすぎんのもアカンで?」
そう言って布団を掛けなおしてポン、と叩いたら田中は眠ったままちょっと笑った。×××

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