つきとたいよう 月は太陽に恋をしていましたが、自分にはまったく自信がなく、いつもみんなを照らしている太陽が自分のほうを振り向いてくれることなんてないと、思っていました。 太陽は月に恋をしていましたが、夜の闇を静かに照らすやさしい月が、自分の事を見てくれるわけがないと、思っていました。 月と太陽はそういったわけで相思相愛でしたが、お話をする機会には、あまり恵まれませんでした。そしてある日の夜、ついに月が、もう空に昇りたくないと言い出しました。 「でもね、お月様。」 小さい子供のように頑なに嫌がる月に、ひとつの星が声をかけました。 「太陽さんは、いつでもあなたのことを照らしてくれてるじゃないですか。あなたは大好きな太陽さんの光で輝いているんですよ? あなたは、もっと自信を持ってもいいはずです。」 そしてまた、こうもいいました。 「私は昼間青空に浮かぶあなたを見ていつも思います。太陽さんは私たちの光は全部消してしまうけれど、あなたの光は消さない。きっと、あなたにそばにいてほしいんだなって。」 星はそう言って、ちょっと悲しそうに光りました。 太陽はある朝、もう空に上りたくないと言い出しました。そこで一片の雲が太陽に言いました。 「あなたが照らさねば、あなたの大好きなお月様は消えてしまわれる。あなたは毎晩、あの方のひかりの子守唄を聴かないと眠れないお人でしょう。」 そしてさらにこう続けました。 「それに、昼間のお月様の顔。あれをあなたは見たことがありますか? 夜よりずっと、やさしい顔をしておいでだ。」 月は太陽に恋をしていましたが、自分にはまったく自信がなく、みんなのことを照らしている太陽が、自分のことを好きなわけがないと思っていました。 太陽は月に恋をしていましたが、夜の闇に静かに光るやさしい月が、自分のことを好きなわけがないと思っていました。 でもふたりは、お互いの姿を見るだけで幸せだということに気がつきました。そこで相手が、いつも光っていてくれるなら。 今日も青い空で、白くてきれいな月が太陽を見ています。 青い空で、白くてきれいな月を、太陽が見ています。 fin. |
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