3月14日のコンビニにて


あれから一ヶ月。
何の変化もない私たち。



一ヶ月前。
板チョコを渡してしまった藤崎真琴くんは女の子のような名前のかわいい男の子で。
空前のかわいい男の子ブームの今、結構もてているやつで。
私大沢わたるとはいわゆるひとつのマブダチ関係だ。
ただ先月、何を思ったか私が彼に「本命チョコにする」と明言していた板チョコレートを贈ってしまったものだから、なんとなく、ちょっとだけあれはなんなんだったんだと考えてしまったりする。
そんな日々。
ただ私は前々から、マコトのこーいうとこが好きだあーいうとこが好きだー、と普通に言っていたので、どこまで本気にしていいのか、まったくわからなくて困っている。

多分これはお互いに。

それは私のあけっぴろげな性格が問題なんじゃないかと思うんだけど、今さら昔の行いを正せって言われてもそれは無理な相談だし。
今まで言ったことはすべて本当だから別に正して歩く必要もないじゃないか。
と思うのもまた私の悪い性格なのかもしれないが。
しょうがないじゃないですか。

「わたる? 何見てんの?」
「ん、新作チョコレートが出てると思って」
「ほんとだ。桃? ウマイのこれ?」
「わからん」
「ふーん、とにかく早くしないと昼休みが終わるけど」
ほら、この細かいところにこだわらないところとかはかなり好感が持てるよ。
別にドキドキとかしないけど。
「ん、わかった」
昼ごはんを買いにコンビニに来たのだという目的を忘れかけてチョコレートの棚を物色してしまうことは、私にはよくあること。
マコトはそんなことは気にも止めない。
このおおらかさがとても居心地よい。
おおらかって言うより天然?
とにかく本当に昼休みが終わってしまうので適当におにぎりを掴んでサラダと一緒にレジへ持っていく。
マコトはコンビニの外で待っていた。
「おまたせ」
「あ」
「え?」
時計をちらりと見て、マコトは 「ゴメン忘れ物」 と、コンビニに戻っていった。
お弁当を2つも買っておいて、これ以上何を忘れたって言うんだ。
…デザートかな。
と思いながら待っていたら、すぐにマコトは戻ってきた。

そしてハイと。
手渡されたのは2本のチュッパチャプス。
「…?」
「今日3月14日じゃん、言えばいいのに、わたるったらもー」
「は?」
「お返しお返し。板チョコの」
「あー」
「あれ、やっぱりさっきのチョコの方がよかった?」
「ていうか単価が安すぎなんだけど」
「痛いところ突くなよ、あと100円しかなかったの、財布に!」
あー、お弁当をふたつも買ったから?
と思って思わず吹き出してしまった。
「あ、笑うなよー!」
「いやぁゴメン、やっぱりマコトはスバラシイね」
「は?」
「うん、スキスキ、大丈夫」
と、ポケットに2本のチュッパチャプスをおさめると、マコトが赤面していることに気付く。
「あれ、どうしたの?」
「スキ?」
「うん、チュッパチャプス」
「…お前の言うことはいちいちいろいろな意味に取れすぎ!」
「え、今意識しちゃったー?」
「しちゃったー!」
わはははは、と大声で笑うとまことは怒りかけて結局私より盛大に笑っている。
ああダメだかなり面白い。
オナカ痛い。
面白すぎる、藤崎真琴。
バレンタインに「本命」とおぼしきチョコレートを贈ってそのお返しまで貰っといてこういうことを言うのもなんだけど、面白すぎる。

願わくば明日も、こうして笑っていたいなと、思った。

ということで一ヵ月後の今日、ほんのちょっとだけ変化の兆し。
引き続き今後の展開に期待!


おわり。

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