いつもの帰り道



 さあ、もう帰ろうと思ったところを呼び止められた。
「なあに?」
「『なあに?』じゃねえよ。なに帰ろうとしてんだよ」
 ほえ? 今日の仕事はもう終わったはずなんだけどなー。クラブ・委員会の夏休み活動計画も一通り目に通したし、あすなろ祭参加草案書の申請書類も作り終わったよねえ?
 そうつらつらと今日やったことを思い返していると、目の前のもともと背が高くて体格もいい無愛想な男の顔がさらにゆがんではっきりいってコワイ。
 たぶん、こいつは私の思考が手にとるようにわかるんだよね。
「ええっとお、何かあったっけ?」
「総会の司会の原稿草案、明日までだぞ」
「ええ!?」
 総会ってまだ時間あるのに!
 そんなに早くだったっけ!?
「ホントに?」
「そんなことで嘘ついてどうすんだよ。本当に決まってんだろ。あんた、総会のことは頭になかったみたいだってけど、総会の司会はあんたじゃなくて中央委員会の方に委託するんだから、とっとと用意しないとまずいんだよ」
 うっわ、思い出したよ、そうだった。
 去年より、人手不足の生徒会。去年は私が司会をやったけど、今年はそうもいかない。
 かなり大きな規模の高校なので、選挙があまり機能しない。だから、選挙制ではなく、自主的に集まったメンバーで生徒会が構成される。だけど選挙制じゃない分、こういう人数不足が起こったり、逆にすごく人数が多かったり面倒が多い。この生徒会室だって、基本的に出入り自由だったりするから、貴重品の棚には鍵をしっかりかけなくちゃいけないし、だから正規の役員はそれぞれが鍵を持っていなくちゃいけない。予算がかかるので、引退したら置いて行ってくれているけど、やっぱり毎年いくつか作らなくちゃいけなくて結構無駄が多い。
 かく言う私も鍵を持っている一人で、おまけに会長だったりなんかする。役職なんかは前任会長の指名が原則。どうしてかわからないけれど、前の会長は私を指名してしまった。
 ま、基本的に共同作業だから、名前だけって感じだけど。
 ちなみに目の前の無愛想な男は副会長だったり。
「じゃあ先輩、先に帰りますねー。頑張ってくださーい」
「お先にー」
 一緒に生徒会室を出ようとしていた小柄で可愛らしい一年生の女の子と二年生の書記の男の子がくすくす笑いながら挨拶してきた。
 うう、いいなあ……。
「またねー……」
 私も帰りたいよう。
 でもなー、こいつがなー。
 ちらっと無愛想男に目をやると、逃げようったってそうは問屋が卸さねえぜって勢いの目でぎろっと睨まれた。
 そーよね、明日までだもんね。必要なものだもんね。
 ああ、きっと逃げらんないようにいつもみたいにこいつが見張ってるんだろうなー。
 と、そんなことを思っていると、無愛想男はいつものように淡々とした声で宣言してくれた。
「終わるまで帰さねえかんな」
 うわーん!! こわいようっ!
 司会の原稿って結構まだ書き直しが残ってんのに〜〜。
 今日、ワタシは何時に家に帰れるのでしょう……。


 結局、原稿は日が沈んで真っ暗になるまで出来上がらなかった。別にそれは私の仕事が遅いせいじゃなくって、単に量が量だっただけなんだけど。
 ま、やる気がなかったことも確かなんだけど。そりゃあ、あんまり広いとは言えない生徒会室の中、次々と帰っていく役員たちを羨ましく引きつった笑顔で見送りながらも仕事を続け、最後には無愛想男と二人きり。しかもこの男ときたら無駄な口は一切聞かない。ただ黙々と自分のノートパソコンで仕事をしている。
 空気が気まずいったらない。 
 ただでさえ周りにあんまり人が通らなくて静かなのに、私のペンを走らす音と、むかいのパソコンをカタカタと打つ音しかしないのだ。
 そういう状況に耐えられなくなって何度も話しかけようとしたはしたけれど、その度にぎろっと睨まれてすごすごと退散せざるをえなかった。
 こいつにはきっと嫌われているのよ。
 何度もそう思ってはいるけど、今日またその思いを強くした。
 でも、何で?
「なにぐずぐずしてんだよ」
 マイペースで帰り支度をしていたら、もうとうに支度を終えていた無愛想男がドアのところで苛立たしげな声を出している。
「はい〜、今行きます〜」
 残りの荷物を慌ててバッグに詰め込んだ。ぐしゃっと嫌な音がした。きっとプリントがぐしゃぐしゃになったんだろう。
 うう、たぶん今日の宿題のプリントだあああ。くっそう、惜しいけどこれ以上あいつの機嫌が悪くなるのも怖いし、ここは目を瞑ってしまおう。帰ってから伸ばせばいいよね……。


 はっきり言って帰り道も気まずい。
 学校は駅からちょっと離れていて、でもバスを使うのもバス停が遠い上に本数が少なくて不便なので生徒はほとんど徒歩で通っている。自転車って子もいなくはないけど、自転車でなくても歩ける距離だし、自転車置き場もそんなに数がないからやっぱり徒歩が多くなる。雨の時も不便だし。
 私は電車に乗って5つめの駅で同じ市内に住所のあるこの男も同じ駅なので、遅くなるといつも一緒に帰るけど、その間もほとんどしゃべらない。
 無言…………。無言…………。
 やっぱりこいつは私のことを嫌ってて私が気まずくなるのが分かってて嫌がらせでこんなことをしてるのかな。
 確かに暗い夜道を一人で帰るのも怖いし、学校に一人で居残るのも寂しいし、そこは助かってはいる。いるんだけどさ、いくら何でもこれはつらい。
 そんなこんなで私はこの無愛想男と一緒にいる時間がかなり長いのに、しゃべった時間はきっとこの間生徒会に入って来たばかりの一年生たちとの時間より短い。
 もう三年生だっていうのに……。一年生のころから一緒に生徒会やってるっているのに……。
 前はもともと無口な奴なんだろうと思って大して気にもしてなかったけど、めったに出会うことも見かけることもない教室での姿を見かけたとき、こいつはいたって普通にクラスメイトとしゃべっていた。
 誰かが冗談を言ったのか、腹を抱えて笑っている姿を見たとき、本当に愕然とした。これは本当にあの無愛想な男なんだろうかって。
 私は笑っている姿を見たことなんて一度もなかった。
 驚いて生徒会室で他の人間に話したら、みんながみんなきょとんとした顔をした。
「何言ってんの、いつもそうじゃん!」
 それぞれが似たような言葉を返してきた。
 私が必死で抗議すると、同じく三年間生徒会にいる隣のクラスの会計の女の子がにまにましながら私の頭を撫でた。
「ま、会長にはそうかもねえ。……しょうがないねえ、あいつも」
 って私に対してだけ無愛想なんかいっ!
 ふーん、やっぱりそうなんだ。へー…………。
 その時はちょっと傷ついたけど。理由もわからないのでそのまま放っておいた。
 でも、ここまでくるとなんか悲しい。
 私が何をしたっていうんだろう。
 それに、私が嫌いなんだったら避けてくれればいいのに。……それはそれで傷つくかもしれないけど、今の状況よりずっとマシだ。
 なんだか本当に悲しくなってきて、歩調はどんどん落ち、顔もうつむきがちになっていった。
 もともと一緒に帰っているとはいっても私は彼の後をついていっているようなものだったので、そうなると二人の距離はどんどん離れていく。
 いつもだったら、ちょっと小走りになってでもついていくところ(夜道は怖いので)だったけれど、私はあえて追いかけはしなかった。
 離れ始めて一分経つ頃には、駅から続く商店街の人ごみにまぎれて前を歩く姿は見えなくなった。

 私は一人だ。

 そう言葉が浮かんだとき、私の遅くなっていた足は完全に止まった。
 このまま駅に行ってしまえば、結局は電車が一緒になる。あの無愛想男の顔を見たくなかった。一人でいたかった。
 行きかう人の邪魔になりながらも私はその場に立ち尽くした。
 目頭が熱くなって涙が出そうで、でもそんなのは嫌で、上を見上げた。
 幾つもの雲の出た夜空。本来ならたくさん星も見えるはずなのに、地上の煌々とした灯りのせいで一等星くらいに明るい星しか見えはしない。
 それも仕方ない。私たちは夜の不安をなくすために明かりを手に入れて、夜空の美しさを手放したのだから。
 何度か瞬きしていると涙も引っこんでくれた。
「……おなか減ったな。何か食べてこうかな」
 そういえばさっきファーストフードを通り過ぎた。そこにしよう。
 そう決めるやいなや踵を返して、私はファーストフードに入っていった。


 バーガーとポテトとアイスティーのセット。
 いつもはシロップの量を控えているけれど、気分を落ち着けるにはやっぱり甘いほうがいいだろうと全部入れてしまった。
 ストローに口をつけて飲むとやっぱりひどく甘かった。
「こんなに入れるの止めとけばよかったかも……」
 後悔してももう遅い。入れてしまったものはしょうがない。
 ため息をつきながらバーガーとポテトを食べていると、携帯が鳴った。
 そのとき初めて家に遅くなると連絡を入れるのを忘れていたことに気がついた。
 やばいっ! きっとお母さんだ!
 慌てて携帯を取り出そうとしたが、バッグの底の方に行ってしまっていた携帯はなかなか取り出すことができずに音が途切れた。学校を出るときに乱雑にしまったツケだ。
 荷物をいくつかテーブルの端に出してやっと音の止まった携帯を取り出せた。

『不在着信あり』

「わかってるわよ、そんなこと。出られなかったんだからしょうがないじゃない」
 言っても意味のない文句を携帯に対して呟いている自分がなんだか悲しい。
 十中八九自宅からだろうと思って着信履歴を確認すると、予想は外れていた。
「ええ!? な、なんで?」
 意外にも着信履歴に表示された名前は無愛想男のものだった。
 生徒会用の連絡網もあるから、番号は知っている。けれどかかってきたのは初めてだった。
 動揺していると手の中で再び携帯が鳴った。
 名前を確認してすぐに電話に出た。
「もしもし?」
 おそるおそる声を出すと、返事が飛ぶように返ってきた。
『もしもし!? あんた今何処にいるんだ!?』
 語気が荒い。それに何か焦っている?
『もしもし!?』
 返事をせずにいるともう一度大きな声がした。
「……なんで?」
『いいから答えろ! 何処にいる!?』
「駅の近くのファーストフードだけど……」
『わかった。すぐ行くからそこ動くんじゃないぞ!』
 ぶつりと通話が切れた。
 なんだかよくわからないけれど、ここにくるらしい。
「帰ったんじゃ、なかったのかな……?」
 私がいないことに気がつかないか、気がついてもそのまま帰ってしまうだろうと思っていた。
 でも、ここにくるって言っているからには電車には乗っていないのだろう。
 なんでだろう。
 なんで帰ってしまわなかったのだろう。
 ぐるぐる考えながらアイスティーを飲んだ。
 やっぱりとても甘かった。


 バーガーと食べ終えてポテトをつまみながら入り口をぼうっと眺めていると、ほどなくして無愛想な副会長がすごい勢いで駆け込んできた。
 その勢いと格好に唖然として声をかけるのを忘れた。
 だってすごい。
 汗だくだくだし、走ってきたのか息も荒いし、普段から鋭い目つきがさらに血走っているように見える。
 普段は冷静沈着で何事にもほとんど動じない感じのイメージだったのに、今はそんなのがかけらも感じられない。
 きょろきょろ店内を見回して私を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。
 私はそれにとっさに反応できずに座ったまま動けなかった。
「どうしてついてこないんだよ!?」
 すごい形相で怒鳴った。
「振り返ったらいねえから驚いて来た道を戻って学校まで行ったんだぞ!?」
 え……。が、学校!? そんなに戻ったのか、こいつ。
「わき道を見てってもいないし、何かあったかと……」
 そこまで一気に言うと無愛想男はテーブルに手をかけたまましゃがみこんだ。
「ど、どうしたの!?」
「走り回りすぎて息が切れた……」
 …………そりゃあ、学校まで往復走れば疲れるだろう。
「で?」
「『で?』」
 首を傾げると不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「どうしてついてこなかった?」
「う……」
 どう言ったものか迷った。
 正直に一緒に帰りたくなかったのだと言ったものか、それとも適当に言い訳すべきか……。
「ええっとお……あのぅ……」
 ただでさえ嫌われてるっていうのにこの状況で言うのは恐すぎる〜〜!!
 ホントのことは言えない〜〜!!
「ちょ、ちょっとおなか空いたかなーなんて思ったりして……」
 ちょっと無理があったかもしれないけど、引きつり笑いでごまかしてしまえっ。
 ごまかせなかったらそれまで!
 やけくそだったけど、どうやらごまかせたらしく、無愛想男は呆れたようにため息をついて私の向かいの椅子を引いて座った。
 荒かった息もだんだんと収まってきて、滝のように流れる汗も自前のハンカチでふき取って落ち着いてきている。
「それならそうでちゃんと言ってからにしてくれ」
「ご、ごめんなさい」
「でも……よかった……無事で」
 はっ!?
「何かあったかと思って心配した……」
 へっ!? し、心配!?
「あんたが、私の!?」
「……しちゃ悪いのかよ?」
 しまった、最後の口に出てた……。
 しかもなんかむっとしてるし……。
「い、いや悪くはないけど、あんた私のこと嫌いなんじゃないの? 何で嫌いな人間の心配なんかするの?」
 なんだか焦って余計なこと言ってる気がするんだけど。
 で、でも訳がわからない。なんでこいつが……。
「は? 誰が誰を嫌ってるって?」
 無愛想男はその名を返上したのか、百面相だ。今度は驚いた顔をしている。
「あんたが私を」
「誰がそんなこと言ったよ? 嫌ってなんかいない」
「嘘!」
「嘘じゃねえよ」
「絶対、嘘!」
「嘘じゃねえって」
「嘘うそ嘘うそ!!」
「嘘じゃない! しつこいぞ!」
 いらいらした様子で怒鳴られた。でもこっちだって負けちゃいない。
「だって信じられないわよ! いつもいつも人にからんでくるくせに無愛想で全然しゃべんないし、いつもそうなのかと思ったら私だけだし! これが嫌いだっていうんじゃなかったらなんだっていうのよ!?」
「それは……違う……」
 珍しく言いよどんでいる。いつもはっきりきっぱりな彼にしたら非常にめずらしい。
「何が違うのよ」
「嫌いなんじゃ、ない」
「だから何だって聞いてるの! いつもいつも気まずーい雰囲気は嫌なのよ。この際、はっきりさせましょう」
 私が強気に出ると萎縮するのは今度は向こうの番だった。
 うつむき加減でなんだかもごもごいっているようだけれど、はっきりいって全く聞こえない。
 これだけ近くにいるのに聞こえないっていうんだからおそらく声に出てないんだと思うけれど、本人はそれに気がついてないらしい。
「何言ってるのかまったく聞こえないんですけど」
「……………」
 今度はちょっと音声が聞こえたけれど、聞き取れはしなかった。
「何言ってるのか分かりまーせーんー。はっきり聞こえるように言ってよ」
 ちょっと私、意地悪かもしれない。
 でもこれまでの気まずさから比べればこんなのたいしたことない……ハズ。
「…………反対だ」
「――何の?」
 聞き返した私に苦虫を噛み潰したような顔をした。そしてしぶしぶと口を開いた。
 いったいなんなのよ?
「……嫌いの反対だ」
 嫌いの反対?
 嫌いの反対って、対義語ってことよね?
 ええっと……あれ? なんだか信じられない言葉が浮かんできた。
 ………………………………ええ!?
 そ、それって……。
「私のことが好きってこと!?」
「でかい声でいうな!」
 とっさに私は口を押さえた。自覚なしで大声を出していたらしい。周りの客たちがびっくりしている。
 でもそれも仕方ない。本気で驚いているんだから。
 しかも、何? 否定しないってことは本当にそうだって事で……。
 さらにこいつ、顔が真っ赤だ。
 ってことは本気…………?
 うわ。なんだか私まで顔が熱くなってきた〜〜。
 こいつが私のことを好き…………。それは考えてもみなかった。
 だってだって態度が悪すぎ。どうしたら私のことが好きだなんて思えるっていうのよ?
 あ、でもそういやあの子たち意味深なことをいっていたような……。
 ということはみんなにはバレバレだったってこと!?
 知らなかったのは私だけ?
 なんかそれって……。
「まあ、でもそういうことだから……」
「え、あ、う、は、はい。そういうことですか……」
 う、この場合どう受け答えしたらいいのか……。
 私たちは向かい合った席に座ったまま動けなくなってしまった。二人とも真っ赤だし。いっぱいいっぱいだし。
 なんだか、今までと違う意味で気まずい…………。

 それからどれくらいそうしていたのかわからない。けれど閉店時間のせまった音楽が流れてやっと私たちは動くきっかけができた。ということは一時間以上そのままだったってことだ。
「でよっか……」
「ああ」
 私が言うと頷いてトレーを片すのに彼はついてきた。
「あ」
「な、何?」
「その飲み物まだ残ってる?」
 彼はシロップを入れすぎたアイスティーを指していった。飲みきった記憶もないからきっと残っているはずだ。実際持ち上げてみると結構残っている。
「うん。残ってるけど?」
「じゃ、それもらっていいか? 喉が渇いてるのを忘れてた」
 そりゃあ喉も渇くだろう。それだけ走ればね。
 どうぞと手渡すと彼はフタを空けて一気に飲み干した。
「サンキュ」
「いや、別に構わないんだけどさ。今の、甘くなかった?」
「全然。ちょうどいいくらい」
 え? 確かに氷が融けて薄まってはいるだろうけど、さっきあんなに甘く感じられたのに……。あんなにシロップたくさんだったのに……。
 あ、こいつもしかして……。
「つかぬことを聞くけど、もしかして甘いもの好き?」
 眉を寄せて訊ねるとちょっと恥ずかしげに頷いた。
「結構、好きなほうだと思う」
 ひえええ、意外だあ!
 この無愛想男に甘いもの。似合わないことこの上ない。
 ―――でも、ちょっとかわいいかも……。
 なんか私、感覚がマヒしてきてるんじゃ……。


 その後、やっぱり無言のまま、でも今度は並んで道を歩いて駅まで歩いた。電車も乗った。
 でも今までのような気まずさはなくなっていた。――替わりの気まずさはあったりしたけれど、そんなに気分の悪いものじゃない。
 なんだか変な感じ。
 しかもいつもはそんなことしないのに、あんまり遅くなったからって家の本当に近くまで一緒についてきてくれた。
 なんだかすごくほっとした。
 じゃあと言って走って道を戻っていく後ろ姿を見送りながら、結局私は何も答えていないことに気がついたけれど、まあ、向こうも気がついてないみたいだからいいかと思った。急なことで動転してあんまりよく考えられない。
 だからしばらくの間、生殺しで待ってもらわなきゃなんだけど……。
 ま、いいよね?
 でもとりあえずはこれから、心配させて走らせてしまったお詫びと送ってくれたお礼を兼ねて何かお菓子でも作ろうかな。

END


これはお友達のちがやさんのサイト『蓬茅堂』1周年記念に彼女が書いた作品です。
高校生…。高校生の頃の私は、ただただ演劇一色の生活を送っていましたね…。懐かしい。
さて、次も同じ企画ものです。同じ人が書いています。(笑)

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